試合前展望
2025年3月16日、J1第6節は、レモンガススタジアム平塚で湘南ベルマーレとヴィッセル神戸が対戦。
湘南ベルマーレは堅守と機動力を活かす3-1-4-2の布陣で臨む一方、ヴィッセル神戸は大幅にメンバーを入れ替えた4-1-2-3で試合に挑む。
攻撃力のあるエリキ選手や佐々木選手の起用がカギとなりそうだ。湘南はルキアン選手の先発起用で攻撃に厚みを加えたいところ。
過去対戦成績では神戸がわずかにリードしており、試合の主導権をどちらが握るか注目される。
前半
前半は、神戸が積極的な攻撃を仕掛けて主導権を握る展開となった。
立ち上がりは静かな立ち上がりで、両チームともに慎重に様子を伺いながらプレー。前半10分時点では、互いに決定的なシュートシーンがなく、堅実な守備が目立った。
神戸が最初にリズムを掴み始めたのは、前半15分を過ぎたあたりから。井手口陽介選手がペナルティエリア手前から鋭いミドルシュートを放ち、湘南のGK上福元選手にセーブされるも、相手に脅威を与えるシーンとなった。続く19分には、宮代大聖選手のスルーパスからエリキ選手が抜け出し、佐々木大樹選手がゴール前で決定機を迎えるなど、徐々にゴールへ迫る場面が増えていく。
そして、試合が動いたのは前半24分。こぼれ球に素早く反応したエリキ選手がペナルティエリア中央から右足を振り抜き、ゴール右上へと突き刺す先制点を奪取。湘南にとっては不運な形での失点となり、以降は神戸の攻撃の勢いが加速する。
その後も神戸は畳み掛けるように攻撃を展開。佐々木選手、宮代選手がコンビネーションで湘南守備陣を揺さぶり、湘南は守備に追われる時間が続く。前半37分には再びエリキ選手がペナルティエリア中央から冷静に右足でゴール右下へと決め、スコアを2-0とする。湘南のDFラインは反応しきれず、個の力で突破される場面が目立った。
湘南も30分以降は巻き返しを図るべく、畑大雅選手や鈴木章斗選手が積極的に仕掛けを試みる。33分にはルキアン選手がシュートを放つも、M.トゥーレル選手にブロックされ得点には至らず。右サイドから藤井選手、小野瀬康介選手がクロスを供給するも、神戸のディフェンス陣がしっかり対応した。
前半終了間際には、キム・ミンテ選手がCKからヘディングでゴールを狙うも、神戸のGK前川黛也選手の好セーブに阻まれる。VARのチェックも入ったが、得点にはつながらず、そのまま前半を終了。スタッツ上では湘南がわずかにポゼッションを上回るも、シュート数やゴール期待値では神戸が優勢だった。
神戸が効率的な攻撃で2点をリードし、湘南が後半に向けて反撃の糸口を探る展開となった。
後半
後半は湘南ベルマーレの反撃から始まった。ハーフタイムで平岡選手を下げ、高橋選手を投入し、よりアグレッシブな姿勢を見せる湘南。後半6分、試合は動いた。左サイドからの畑大雅選手のクロスに、ルキアン選手がペナルティエリア中央で見事なヘディングを決め、ゴール左下に突き刺す。これでスコアは1-2、湘南が1点差に詰め寄り、スタジアムの雰囲気も一気にヒートアップした。
このゴールを機に湘南は勢いを増し、ポゼッションでも神戸を上回るようになる。特に後半15分までのポゼッションは湘南64%、神戸36%と湘南が主導権を握った時間帯となった。畑選手、小野瀬選手、藤井選手らがサイドから次々とクロスを供給し、ルキアン選手や奥野選手がゴール前でチャンスを狙う。畑選手の積極的なドリブルから鈴木雄斗選手がシュートを放つなど、神戸ゴールを脅かす場面が何度も見られた。
一方の神戸は後半12分に佐々木選手に代えて大迫勇也選手を投入し、前線での起点を作る狙いを見せた。扇原選手のスルーパスから大迫選手がヘディングシュートを試みるなど、流れを断ち切るプレーもあったが、湘南のディフェンスラインは集中力を切らさず、シュートをブロックし続けた。
後半26分には小野瀬選手のスルーパスから藤井選手が抜け出し、中央に折り返すも、またしてもM.トゥーレル選手がクリア。畑選手のミドルシュートも惜しくも枠を外れるなど、湘南にとってはあと一歩が届かない展開が続いた。
時間が経つにつれて選手交代が進み、湘南は鈴木章斗選手に代えて根本選手を、神戸は宮代選手に代えて井出選手を投入。終盤の活性化を狙ったが、特に湘南は最後の10分間に攻勢を強めた。畑選手のクロスにルキアン選手が合わせたシュートは枠をわずかに外れ、同点弾にはならなかったが、観客を大いに沸かせる場面だった。
一方の神戸も井出選手や山内選手を投入して試合の締めにかかる。山内選手は後半アディショナルタイムにイエローカードを受ける場面もあったが、チーム全体としては落ち着いた試合運びでリードを守りきる。湘南の最後の猛攻を耐え抜いた神戸が、最終的には1-2で勝利を収めた。
後半のスタッツでは、シュート数は互角(7本ずつ)ながら、湘南のゴール期待値は神戸を上回り、攻撃の質も高かったことがうかがえる。結果として同点には届かなかったが、湘南の後半のパフォーマンスは称賛に値する内容だった。
総括
この試合は、前半で2得点を奪ったヴィッセル神戸と、後半に猛追を見せた湘南ベルマーレの対照的な展開が印象的な90分となった。スコアこそ1-2で神戸が勝利を収めたが、両チームの特徴がはっきりと表れた好ゲームだったと言える。
まず神戸は、大胆なスタメン変更にも関わらず、チーム全体の連動性が高く、特に前半の攻撃の完成度は非常に高かった。注目すべきはエリキ選手の2ゴール。ペナルティエリア内でのポジショニングとシュート精度は抜群で、わずかな隙を逃さず得点につなげた。そのエリキ選手を中心に、佐々木選手、宮代選手、武藤選手らが高い位置からテンポよく仕掛け、湘南守備陣を押し下げた。ポゼッションではわずかに湘南に劣ったものの、ゴール期待値を見れば神戸の効率的な攻撃が光った前半だった。
一方の湘南は、後半に試合の流れを大きく変える。ルキアン選手のヘディングシュートによるゴールを皮切りに、サイドからのクロスや中央突破で神戸ゴールに迫った。特に畑選手の突破力、小野瀬選手と藤井選手のクロス精度、ルキアン選手のゴール前での存在感が際立っており、得点こそ1点にとどまったものの、後半の攻撃内容は試合を通して最も熱を帯びた時間帯だった。
試合全体を通して見ると、前半の神戸の完成された攻撃と、後半の湘南の粘り強い反撃という対照的な時間帯が重なり合い、見応えある一戦となった。スタッツでは、最終的なシュート数は7本ずつ、枠内シュートも神戸4本に対し湘南が2本と拮抗。ゴール期待値では湘南が0.74、神戸が0.63と逆転し、後半の湘南の攻勢が数字にも表れている。
この試合のポイントは、神戸が少ないチャンスを確実にモノにした一方で、湘南は最後まで攻め続ける姿勢を崩さなかったことにある。試合に勝った神戸は選手交代も効果的で、ゲームを通して試合運びが非常に落ち着いていた。一方、湘南も途中交代でリズムを変え、後半だけを見れば圧倒的な勢いを見せた。結果は惜敗となったが、後半の内容から多くの手応えを感じられるだろう。
サポーターにとっても、この試合は心を揺さぶられるような展開だったはずだ。前半で離されても諦めず、後半でギアを上げていった湘南の姿勢、そして前半でしっかり得点を重ねた神戸の戦術的完成度。互いの強みと課題が浮き彫りになった好ゲームであり、今後の両チームの成長にもつながる内容となった。
今後
湘南ベルマーレはこの試合、後半に見せた怒涛の攻撃が大きな収穫でした。特にルキアン選手のゴールシーンは、畑選手の正確なクロスとともに、湘南が誇るサイドアタックの真骨頂を感じさせるものでした。小野瀬選手や藤井選手も繰り返しクロスを供給し、ゴールに迫る迫力ある攻撃を展開。ルキアン選手を軸にした前線の形がはっきりと見え始めており、今後の試合でさらなる得点を期待できそうです。
また、守備面でも上福元選手の好セーブや、キム・ミンテ選手の空中戦の強さが際立ち、粘り強い守備が光りました。惜しくも敗戦となりましたが、後半のようなアグレッシブな姿勢を継続すれば、チームの成長と結果につながるはずです。次節以降の巻き返しに期待が持てる内容でした。
ヴィッセル神戸はこの試合、前半の効率的な攻撃が見事でした。大幅なスタメン変更があった中でも、エリキ選手を中心とした前線の連携は非常にスムーズで、短時間で結果を出せたことはチームにとって大きな自信になるでしょう。特にエリキ選手の2ゴールは、そのポジショニングの良さと決定力の高さを証明するものでした。扇原選手や井手口選手の中盤での配球も正確で、前半のビルドアップからの崩しは非常に完成度が高かったと言えます。
また、守備ではM.トゥーレル選手を中心に粘り強く対応し、リードを守り切る冷静な試合運びも印象的でした。チームとしての地力が確実に高まっており、今後の上位戦線でも大きな武器となるでしょう。勝ち点3を確実に積み重ねたこの試合は、今後の戦いに向けた良いステップとなるはずです。