試合分析・戦評
勝てば3位確保へ前進したい神戸と、2連勝中で勢いを持ち込んだFC東京の一戦は、スコアレスドローという結果に終わった。しかし内容面では、神戸が主導権を握り続け、終始試合をコントロールした90分だった。
前半から神戸は高い位置でプレスを仕掛け、FC東京のビルドアップに強い圧力をかけ続けた。特に扇原選手・井手口選手・飯野選手の3名は球際の強さとインターセプトで存在感を発揮。FC東京は序盤こそ遠藤選手らの前進でシュートを放つ場面があったものの、その後は押し込まれる展開が続いた。
神戸の攻撃で目立ったのは、右サイドからの繰り返しのクロスワークである。飯野選手、扇原選手、山川選手といった供給源が幅を取り、武藤選手・大迫選手・佐々木選手が中央で合わせる形を何度も作った。特に前半44分の井手口選手のシュートはGK波多野選手のビッグセーブに阻まれ、前半最大の決定機となった。
後半に入っても構図は変わらず。神戸は永戸選手や宮代選手のスルーパスでポケットを攻略し、連動性の高い攻撃を継続。後半73分には大迫選手の読みから生まれたボール奪取→エリキ選手の決定機と、得点の匂いは濃厚だったが、再び波多野選手とFC東京守備陣の集中した対応に阻まれた。
シュート数は 神戸20本/東京6本、枠内シュートは 神戸6本/東京2本、ゴール期待値(xG)は 神戸1.87/東京0.22 と数字でも神戸の優勢が際立つ内容だった。
一方のFC東京は、守備時のブロック形成に徹し、Aショルツ選手・森重選手・室屋選手を中心に我慢強い対応を見せた。攻撃では後半30分の佐藤選手のシュートや、終盤の高選手のヘディングなどわずかなチャンスはあったものの、基本的には押し返される時間が長かった。
総じて、神戸は「決め切れなかった試合」、FC東京は「耐え抜いた試合」。スコアレスながら、それぞれのチームの特徴がはっきり表れた内容だった。
これからに向けて
神戸にとってこの試合は、勝点3こそ逃したものの、チームの完成度の高さを強く示した内容だった。まず評価すべきは、90分を通して途切れなかった守備の強度と切り替えの速さである。前線からのハイプレスは効果的で、FC東京のビルドアップにほとんど自由を与えなかった。井手口選手、扇原選手の中盤コンビは機動力と守備範囲の広さを存分に発揮し、相手に脅威を与える存在となった。
攻撃面でも再現性の高い形がいくつも見られた。右サイドからのクロスワークは明確な武器となっており、飯野選手の積極的な突破、佐々木選手の飛び込み、大迫選手のポストワークなど、多様な崩しの手段が整っている。シュート数20本、xG1.87という数字は、攻撃の質と継続性を示すものだ。
また、ベンチから投入されたエリキ選手・酒井選手も効果的にプレッシャーを与え、試合の勢いを維持。吉田監督の交代策も的確だった。
4試合連続ドローとはいえ、チームは確かな方向性を保っている。最終節に向けては、あとは“最後の一押し”だけ。内容の良さは間違いなく勝利へつながるもので、神戸は高いクオリティを保ちながら自信をもって次戦に向かっていけるだろう。
FC東京は押し込まれる時間が長かったものの、守備の粘り強さとGK波多野選手のビッグパフォーマンスが光った試合だった。特に最終ラインのAショルツ選手・森重選手・室屋選手は、何度も危険な場面で体を張り、神戸の決定機を防ぎ続けた。相手の攻撃量と質を考えれば、無失点で終えたことは大きな評価ポイントだ。
攻撃では、佐藤選手の推進力や野澤選手の突破、安斎選手の縦への仕掛けなど、若手選手のアクセントが随所に見られた。特に後半30分以降は神戸の運動量が落ちたタイミングを逃さず、前への推進力が増した点はチームの成長を示している。
交代で入った仲川選手やギリェルメ選手のスピードも効果的で、終盤には高選手の決定機も生まれ、アウェイながら勝点1をしっかり持ち帰った。5試合負けなしという流れも好材料で、チーム状態は着実に上向いている。
最終節へ向けては、守備の安定とカウンターの精度をさらに高めることで、来季への希望を感じる締めくくりができるはずだ。苦しい展開でも崩れない粘り強さはチームの大きな武器となっている。
SNSの反応
■神戸サポーター
「内容は圧倒してるだけに、1点が遠い…でも形はしっかりしてる」
「波多野選手が神がかってた。相手GKを褒めるしかない試合」
「飯野選手のクロスの質、今日は特に良かった」
「4試合連続ドローだけど、悲観する内容じゃない。最後の精度だけ」
「大迫選手のポストワークは別格。あと少しの運さえあれば…」
■FC東京サポーター
「波多野選手、間違いなく今日のMVP!」
「押されていたけど、集中して守りきったのは評価できる」
「仲川選手が入ってから流れが変わった。もう少し早い時間から見たかった」
「ショルツ選手の安定感が凄い。何度救われたか」
「勝点1だけど価値あるドロー。負けなし継続はでかい」
